文化人、クリエイター、アスリート。 様々なシーンで活躍する人々をフィーチャーする「#FOPEMeets!(フォッペミーツ)」
Vol.2でお話を伺うのは「銀座もとじ」二代目である泉二啓太氏。洋装和装の枠を越えて、若い世代に着物の魅力を伝えたいと考える泉二氏は、「FOPEのようなファインジュエリーも着物とコーディネートしていきたい」と語る。ボーダーレス、ジェンダーレスにファッションを楽しむ泉二氏に聞く、FOPEのインプレッション。
――泉二さんのインスタグラム(@keitamotoji)には、和装だけでなく洋装も並んでいてとても興味深いです。好きなファッションのスタイルなどはありますか?
泉二さん(以下、泉二)モード系もストリート系も好きですが、どちらにせよジェンダーレスな雰囲気が好きかもしれません。実際女性ものを着ることもあります。プライベートでは洋装のほうが多いと思いますが、特別な場面にはスーツではなく着物で行くようにしていますね。
――着物には若い頃から親しまれてきたのでしょうか?
泉二 以前は着物に全く興味がなくむしろ毛嫌いしていました。でも洋服は大好きで、「海外で多面的な視点を養い、将来呉服屋になった時に役立てるため」と嘘をついて18歳のときにロンドン・カレッジ・オブ・ファッションに留学させてもらいました。当時は、チェックのシャツにスキニーパンツをあわせてドクターマーチンを履いたり。エディ・スリマンがディオール・オムのクリエイティブディレクターに就任した頃で、音楽も大好きだったのでそんなファッションをしていました。
正直、家業である着物屋を継ぐ気はなかったんです。子供の頃は着物を着た父親と歩くのも嫌だったくらいですから。
僕が留学していた2000年代前半は、日本のストリートブランドがパリコレデビューし、海外でも高く評価され始めていた頃。民族衣装をスケッチする授業では、おしゃれな外国人の友達が日本の着物に注目していて、次第に「やっぱり日本っていいな」と思い始めました。
数年後、父が仕事でミラノに来る機会があり再会した際、あんなに嫌っていた着物姿の父がすごくかっこよく見えたんです。着物をきっかけにいろんな人と会話が生まれるところを目の当たりにして。その頃から自分の国の民族衣装である着物を纏って堂々としている姿っていいな、着物って素敵だな、と思うようになりました。
――ミラノではどのような経験をされたのですか?
泉二 イタリアの職人の方々に協力を頂きながら、革小物やシルバーなど、ものづくりを見せてもらいました。さまざまな工房を巡ったのですが、家族経営の小さな工房で丁寧な仕事をしている様は、日本のものづくりの姿勢と似たところがあると感じましたね。
――今回ご紹介するFOPEも、イタリアのヴィチェンツァというジュエリー作りの歴史的中心地で、家族経営の工房からスタートしたんです。ぜひつけてみてください。
泉二 すごい! こんな風に伸びるんですね。 普段はシルバー素材のカジュアルなものをつけることが多いのですが、つけてみるとローズゴールドも肌に馴染みますね。少し細いぐらいのほうがさり気なくて使いやすそうです。
僕はチェーンジュエリーも好きなのですが、お酒を飲んだりリラックスしている時などは邪魔に感じて外してしまうんです。でもこのFOPEのブレスレットなら軽くてストレスも感じないし、違和感なくずっとつけていられそうです。
――普段からジュエリーをつけていますか?
洋服の時は必ずつけるリングが3つあって、ブレスレットやネックレスは気分によって替えています。そんなに数は多くなくて、気に入ったものをずっと使っているという感じですね。19歳のときにお金をためて買ったアパレルブランドのブレスレットや、ロンドンのアンティークマーケットで買ったバングルもいまだに愛用しています。
このブレスレットには、シャツなどを合わせたいと思いました。普段愛用しているバングルとの重ね付けも相性が良さそうです。ジェンダーレスなデザインだしある程度伸びるので、パートナーともシェアできそうなのもいいですよね。
――ジュエリーのお手入れはどうされていますか?
泉二 ジュエリーも着物もそうだと思うのですが、使えば使うほど自分に馴染んできて味が出ると思うんです。それを僕は経年劣化ではなく「経年美化」だと考えていて。時々クロスなどでお手入れすることもありますが、ピカピカに磨くのではなく、その素材独特の変化も楽しみつつ、長く愛用していけたらいいなと思いますね。。
――ジュエリーは着物にもマッチすると思いますか?
泉二 僕は今のところつけていませんが、着物にジュエリーはありだと思っています。着物を着るときは、その素材感をどう引き立たせてくれるかというのを一番大事にしながら合わせていきます。
絹や麻、木綿など、着物の素材にも色々ありますが、FOPEのジュエリーは艶のある絹の着物と合わせることで、ドレスアップできるのではと思います。
女性ですと、着物とジュエリーを合わせる方は結構いらっしゃいますし、ファッション感度の高い男性がご自身のセンスでジュエリーと着物を合わせて着こなしていると素敵だなと思いますね。
例えば70代の男性で、着物にハードめなシルバージュエリーをつけていらっしゃる方などは、お見かけするたびに「かっこいいな」と思っています。僕の今の年齢であれば、FOPEのようなシンプルで上品なものだったらさり気なくていいのではと思いますね。
和装と洋装の区別はあって然るべきだと思うのですが、それをわかった上で純粋に、ファッションとして着物とジュエリーのコーディネートを楽しむというのも、これからの時代にはマッチしていると思います。
――「銀座もとじ」さんのDNAには、新しいことに挑戦する気風があるのでしょうか?
泉二 「銀座もとじ」は、父が奄美大島から出てきて1979年に創業しました。銀座にある着物屋としては新参者のため、多くのお店の中で他と違うことをやってきたというのはあると思います。
――ご自身として、これから挑戦してみたいことなどはありますか?
泉二 “着物屋”をはじめ、着物に関わる仕事をかっこいいファッションやカルチャーとして憧れられる職業にしていきたいですね。古典的なイメージを持たれがちですが、伝統を踏まえつつ、ジュエリーやメガネを合わせることでモダンな雰囲気を出したり、少しずつ着物文化をアップデートしていきたい。そうやってさまざまな角度から、着物の魅力を20代30代の若い世代に伝えていければいいなと思っています。